漫画「エロスの種子」はもんでんあきこ先生の作品。様々な思惑の中、快楽に身を委ねる男女。ただのエロ漫画ではなく練られたストーリーと丁寧で綺麗な描写がドンドンと漫画の世界へ引き込んでくれます。
この作品は1話完結の短編集。第1巻では4話が収録されており、まさに大人の為の漫画といった印象。
男性キャラの理性が崩れる瞬間と言うのがとても丁寧に描写されており、男なら生唾ゴックンもの(笑) 男性の心情や葛藤にも共感が持てて、ただ薄っぺらいだけの漫画とは一線を画す漫画。官能小説をコミカライズしたような悶々とさせる雰囲気を漂わせます。
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漫画「エロスの種子」ってどんな漫画?
1話完結型の短編集で様々な男女のエロスを艶やかに描いています。
エロスの種子 第1話「因果」
大学教授の妻でありながら夫には抱かれない女:珠子と教授宅でお世話になる蒼井孝太郎の物語。
孝太郎はある夜に珠子と教授が抱き合っている様子を見てしまう。経験のない孝太郎はその光景が頭から離れない。
そして嵐の日。
教授は大学に呼び出されており、自宅に帰ってくることが困難。そこへ落雷。珠子は雷が心底ダメなようで孝太郎に抱きつき「側にいてください」の一言。
この言葉に孝太郎の理性が崩れていく様が如実に描かれている。
その夜、二人は抱き合うが経験のない孝太郎は先に果ててしまう。その時に教授が戻って来るが焦りや嫌悪感を抱いている様子はない。
それどころか、珠子を満足させて欲しいと願い出るのだ。それからは毎日のように教授の前で珠子と抱き合う孝太郎。成績も落ちていく孝太郎は教授の家を飛び出し、大学も辞めて家業を継いでいた。
20年の月日が流れ、教授から一通の手紙が。
そこには身内の者が訪ねるから迎えてやってほしいと綴られていた。
待合室に居た女性は珠子と見間違える程の美女。彼女は珠子は母で自分は透子だと名乗る。
20年以上の時を得て、孝太郎は気づく。教授が何故、珠子を抱けなかったのか…そして教授が自分と同じことをさせようとしていることに。透子を抱きしめて受け入れる孝太郎…。
エロスの種子 第2話「人形」
女性を抱きたくても抱けない男:松岡。抱かれたくても抱かれることができない女性:紫乃が住む家でお世話になる鞠子の物語。
彼女は松岡と紫乃の欲望を満たすだけの人形として松岡家に連れて来られていた。紫乃に身体を弄られ、松岡が覆い被さってくる。徐々に快楽を貪るだけの獣になっていく鞠子。
鞠子が一夜で一気に艶っぽくなる描写は必見。さらに松岡と紫乃の結末が切ないのも見所。
二人を失い空襲によって家も焼かれた鞠子。最後は米軍に連行されるのだが米兵に見せる色気のある表情がとても印象に残るエピソード。
エロスの種子 第3話「ジゴロ」
女に頼って生活をする、いわゆるジゴロな男:六郎と六郎を世話する女の娘:凛の永い永い年月をかけた愛の物語。
幼いながらに自分に優しく、欲しい言葉をかけてくれる六郎に恋心を抱く凛。その想いは凛が高校生か、大学生になった位であろうか爆発をする。公園で六郎にキスを捧げる凛。
物語が進むと六郎は逮捕されることになるが全ては凛の算段であることが後にわかる。
好きな男を守るため、奪うために水面下で動く女性の怖さが良く分かるエピソード。六郎は刑務所から出てきた時は41歳になっている。凛は大人の女性になっている。この時の凛が本当に艶っぽく六郎が最後に思う言葉も納得の一言。
「俺は一生、この女のジゴロで本望だ」
エロスの種子 第4話「マリーゴールド」
この漫画を買った人の評価が最も高いエピソードが最後に収録されている「マリーゴールド」です。戦後の日本が舞台となっており、ストリップ劇場のオーナーを務める林とそこへ飛び込みで踊り子になりたいとやってくるマリーの物語。
高度成長期によって廃れていくストリップ劇場。さらに劇場のオーナーが変わる事態も発生。新しいオーナーは人気のマリーに生板ショーをやらせると公言。
ストリップや踊り子に強い信念を持つ林は劇場からマリーを逃すことに。
時代は平成となり、永い年月を得て出会う二人。
林はマリーを逃したことで2つある臓器の内の一つを落とし前として取られていた。歳も取り、身体や体力も弱っている林。マリーと会話しているとその場に座り込んでしまう。
マリーは次の巡業があり、最終列車に乗らないと間に合わない。俺のことは放っといて行けと伝える林。そこへマリーが林に抱きつく。
その後、歓楽街の路地裏から1人の男の遺体が発見される。林だ。林に外傷はなく女に抱かれながら逝ったような姿勢で発見されるのだ。それを見た警察も羨ましそうに遺体を見つめる。
切ないエピソードではありますが、好きな女性に抱かれて逝った林は本望だったと思います。しかし、この前後のマリーの行動はどうだったのかなど、頭の中で妄想が捗ってしまいます(笑)
漫画「エロスの種子」感想
4話ある作品の中で「マリーゴールド」はとても評価が高い短編になっていますが、個人的には第2話「人形」、第3話「ジゴロ」には背筋をゾワッとさせられました。
したたかな女の怖さが醸し出されており、男は女の道具なのか…と思わせる程。
そして、描かれる女性がとても美しいです。漫画ながらに艶がある。この女性の艶っぽさの変化が大きく見て取れるのも2〜3話に収録されている人形とジゴロかなぁ〜と言う印象。
黒澤R先生の作品「金魚妻」など好きな人は間違いなくストライクゾーンな作品になります。女性の艶を上手に表現して悶々とさせてくれるのはこちらのエロスの種子かもしれません。
ただの薄っぺらいだけの本ではない中身と物語が練られた漫画を探している方は是非、チェックしてみて下さい。
管理人
青年漫画なので過激な描写はありませんが、まさにタイトルに負けない作品内容になっています。発売当初から話題になっていましたがスルーしていました。もっと早く読んでおけば良かった。
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